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30年前のインド旅行記

学者兼会社員58歳が30年前のインド、ネパール珍道中日記を書き起こします。

タージマハールに落っこちる

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デリーからアグラへ

午前6時半。昨日頼んでおいたモーニングコールで目が覚めた。荷造りをしてすぐに、オートリキシャで駅に向かった。駅に着いて昨日予約した列車を探す。ホームに入ってきた車両に予約NOと自分の名前を書いた紙が貼ってあるのを見つけた時には、結構感激した。単に列車に乗るのにこれだけ感激したのは初めてだ。車両の前の席に座っている兄さんは観光地のインド人みたいに気安く声をかけてこないが、時々じろじろとこっちの方を見てくる。僕も時々、ちらちらと見てやった。列車からみるインドの景色はとにかく脈絡がない。あたり一面荒涼とした灰色の世界が続いたかと思うと、パッと畑が開けたりする。前の席の兄さんは結構いいやつなんだが、いかんせん英語がしゃべれない。親しみを込めて、タバコをすすめられたが、僕はタバコを吸わないので断ってしまった。アグラに着く直前、日本語で声をかけてくるやつがいる。いいホテルがあると言ってうるさい。アグラに着いて、列車から降りて話を聞いてみると、僕らが予定していたホテルよりずいぶん安い。とりあえず部屋を見るだけ見てみようということで奴のオートリキシャに乗った。ホテルに着いて金額を聞くと2人で70ルピー、今までの5分の1ぐらいのお金で列車のチケットの予約もしてくれるとの事なので、そこに決めてしまった。そのツーリストゲストハウスのマスターは、英語はおろか片言の日本語、フランス語も操る太てえやつだ。

アグラ城から土産もの屋廻り

僕らは、ホテルにザックを置いて、さっそくアグラ城に向かった。さっきのオートリキシャのあんちゃんが、一日貸し切りで40ドルでどうかと言うのでしょうがないから雇ってやることにした。アグラ城は、全体に赤いという印象だった。アグラ城からタージマハールも見えたが、それほど美しいというほどではなかった。腹が減ったのでレストランに入ることにした。デリーのレストランより店の作りが良くて料金が安い。運ちゃんに言わせると、アグラはムスリムの町なので物価が安いとのことだ。彼に言わせるとブッディストもムスリムもみな友達らしい。彼は、27歳で子供が3人いる。タージマハールは夕方の方がいいのでそれまで時間があるから、大理石の工場と銀細工屋、宝石店に連れて行くという。又、土産もの屋かと思ったが見るだけOKというし、まぁいいや、いってやれと思って、入ってみることにした。

最初に入った銀細工屋のおやじは日本語をよくしゃべる。立って見てると、「まぁ座れ」と言う。そして、「心配ない。見るだけ、見るだけ」と言って、こっちを安心させようとする。「私、今日本語を勉強しています」といいながら次から次へと見せてくれる。日本語を勉強すれば、そんなに儲かんのかな?大物から小物まで、次から次へと見せてくれたが、そもそも買う気がなかったので、結局、断ってしまった。

大理石の小物を買う

次は大理石の工場だ。入って早々に、大理石の細工の仕方から、中に組み込む宝石の産地等を事細かに説明してくれる。次は2人に分かれてマンツーマンで売り込み開始だ。ここでもまず、外人が買った証拠として、領収書を見せてくれる。日本人からドイツ人までさまざまだ。郵送もできますと言って、梱包した狭山市行きの包みを見せてくれる。それから、こちらで半額払って、日本に戻ったら半額送金することも可能だという。どんな銀行なら可能か、例えば、フジギンコウOK、ダイイチカンギン、スミトモ、サンワOK。こいつ、みんな知ってやがる。

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で、いろいろ見せてもらってるうちに、大理石の小箱が欲しいなと思った。一個いくらかと言うと、18ドルだという。ずいぶん高いなぁ。10ドルでどうかというと、私、プア、子供もいる生活できないという。いや。僕もプアだ。これ18ドルで買うと、生活できないと言って値切ってみた。日本から持ってきた古いロードマチックの時計を見せてこれと交換でどうかと聞くとダメと言う。逆に、時計は仏像と交換でどうかと言うので、断った。いろいろ交渉した結果、小箱3つとトレー、それからおまけの象のミニチュアで、合計50ドル払った。原田も買って、2人でTCで支払った。

ピンクに染まったタージマハール

例の運ちゃん、次にカーペットの店に連れて行こうとするのを断って、タージマハールに向かった。「見ると聞くとは大違い」とよく言うが、実際に見てみないとこの素晴らしさはわからない。夕日に照らされて、ピンク色に染まったタージマハールが、ポッカリと浮かび上がっている。まさに、言葉にしても意味がないほどの美しさだ。これは、1人の男が、たった1人の女のために作った墓なんだ。この墓を造り上げるために、費やされたエネルギーを考えると、まさに狂気としか言いようがない。

池に落ちる

タージハマールの全体像を写真の構図に入れるために、後ろ後ろへと下がっていると、「バシャ~ン」、という音ともに、何と池の中へ。あーあ、後ろは池だった。周りの人もみんな驚いている。池に飛び込んだのは、大学の学祭の時以来だ。それは、学祭のいわゆる伝統行事ともなっていた「池落ち」で、ある程度覚悟の上だった。しかし今回は、完全にハプニング。それにしても、タージマハールの池に、これほど、はでに落っこちたやつは世界広しといえども、そうそういないんじゃないだろうか。

霊廟の中

すぐに池から出たものの、全身びしょびしょに濡れてしまった。でも、すでに霊廟への入場料も払っているので、その後、建物の中へ無視して入って行った。廟の中には土足では入れない。1ルピー払うと、靴を皮の袋で包んでくれた。廟の中は薄暗く、お香の香りがただよっている。非常に荘厳な感じだ。床もすべて大理石、そして大理石の棺桶が上下に2つある。歩いていると皮袋から、さっきの水が浸みだして、ぴちょぴちょしてきた。他の観光客もいるし、さすがにまずいので、早々に出ることにした。ちょっと下世話だけど、昨日買った大理石の小箱の金額から換算すると、タージマハールはいったい、いくらになるんだろう?廟の中にあった大理石の棺桶の1つが昨日の小箱の何百倍かはあり、タージマハール全体ではその何万倍かあるはずだ。

ホテルに戻って着替えて、こっちで着れるような服を見に行ったが、またふっかけてくるのでやめにした。結局、ホテルで食事をとることにした。夕方、ちょうどいい気温で、外で食べるカレーはおいしかった。

さっきの水没の影響でカメラのレンズが曇ってしまった。たぶん、自分のカメラは、もう使えない。結果としてはこれが最大の打撃だ。